建築設計事務所の仕事内容とは?
業務内容を徹底解説
建設業界において建築設計事務所は何をすることろかご存じでしょうか?
本記事では、建築設計事務所における業種ごとの仕事内容について、それぞれの職種の違いを含めて解説していきます。
本記事を通して、建築設計事務所にも職種によって専門や得意とする分野が違うこと、実際の業務内容などを理解し、この業界に関心をもってもらえますと嬉しいです。
建築設計とは?建築家と何が違う?
建設業界における「建築設計」とはどのような仕事でしょうか。
まず、設計事務所と呼ばれる組織について説明します。
設計事務所とは、建築物の設計や監理を行う建築家がいる事務所を指します。
建築物の設計や監理業務を受けるためには、都道府県知事に建築士事務所として登録する必要があり、建築士事務所の中には設計や監理のみを専門に行う設計事務所の他、ハウスメーカーや設計・施工を請け負う工務店などが登録しています。
ここで、「建築家」についても説明します。
建築家という職業や肩書に厳密な定義はありませんが、意匠を中心に建築物の設計を考える業務に従事する人が多く、資格と結びついた言葉ではありません。
音楽家を例にすると、音楽家とは実際に演奏する人を指す時に用いられますが、建築家とは、家を建てる人というよりは、設計に従事している人を指す時に用いられます。
建築家の資格
次に建築家の資格について解説します。建築家には主に以下の3つの資格があります。
- 1級建築士:あらゆる建築物を設計可能
- 2級建築士:高さ13m以下、軒高9m以下の木造建築物を設計可能
- 木造建築士:2階建て以下、延べ床面積100~300m2以下の木造建築物を設計可能
上記の従事できる建築物をまとめた表は以下になります。
[table id=23 /]
【A】誰でもできる
【B】一級・二級または木造建築士
【C】一級建築士または二級建築士
【D】一級建築士
業務分野
次に、建築設計の業務分野について解説します。
建築設計の業種は、大きく分けると、意匠設計・構造設計・設備設計の3つがあり、設計事務所によってどの分野を得意としているかが異なります。
意匠設計
意匠設計とは、主に建築物の外観や内部をデザインする仕事です。
発注者の要望を聞き、内観・外観・間取り、造作やデザインなどの建物全体の設計やデザインを担当します。
加えて、構造設計や設備設計などの取り纏めや工事監理なども行い、建築設計全体のプロジェクトマネジメントを実施します。
従って、コミュニケーション力や調整力も必要となります。
構造設計
構造設計とは、建築物の構造設計を主に管理します。
具体的には、建築物の土台や柱、梁などの骨組みに関わる部分の設計を行います。
建築物の立地における地質調査や地盤調査、地震や台風、積雪などの自然災害に対する安全性を計算して設計することが求められます。
ここでは、安全性の高い構造物であることは前提としてデザイン性を高く維持し、緻密さや正確さが求められる職種であるということが重要です。
設備設計
設備設計とは、建築物のライフラインなどを整備する職種です。
具体的には、上下水道・ガスなどの配管、空調や電気設備、インターネットなどの配線があります。
安全で正常に作動することは前提として、維持管理費(ランニングコスト)がかからないように、室内環境が快適に保たてるかどうかを考慮して設計することが求められます。
建築設計の仕事の流れ
建築設計には、「組織系設計事務所」と呼ばれる、公共施設や民間施設などの中規模以上の事業系物件を主に取り扱う意匠設計・構造設計・設備設計の各部門を自社組織内に抱える大きい規模の建築系設計事務所があります。
その他に「アトリエ系設計事務所」と呼ばれる、建築家個人の個性や芸術性を反映した設計を行う、比較的小規模な建築家が所属する設計事務所があります。
いずれにおいても仕事の流れは共通しており、基本的には以下の手順で業務を進めます。
- 発注者との打ち合わせ
- 現地調査(地質や地籍調査)
- コンセプト・ラフデザインの作成と提案
- 建築設計
- 施工会社選定
- 施工監理
- 引渡し
①発注者との打ち合わせ
まず初めに、意匠設計の担当者が発注者と打合せを行います。
そこでは、建築の目的や用途、想像している成果物のイメージや予算感なども含めてヒアリングし、希望条件をまとめていきます。
②現地調査(地質や地籍調査)
建築予定の土地や周辺環境において地質、地籍調査や自然条件調査、水文調査などを行い、日照や景観など発注者の条件に見合った建築をすることに問題が無いか確認します。
③コンセプト・ラフデザインの作成と提案
上記のヒアリング結果を踏まえて発注者の想像に近い形となるように、具体的な建築のイメージやコンセプトを作り発注者とイメージのすり合わせをしていきます。
ここで、簡単なラフデザインなどを描く場合もあり、イメージを視覚的に擦り合わせていきます。
④建築設計
発注者より提案したプランで同意が得られた後、図面作成作業に着手します。
ここで、図面においては意匠設計、構造設計、設備設計の各パートを専門の担当者が連絡を密に取り合う形で進め、図面の重ね合わせ作業、工事費や概算・予算配分を行い、実施計画書の作成に着手します。
⑤施工会社選定
発注者の承認を得た後に、施工会社の選定を行います。
公共工事においては競争入札などの手段を用いて施工業者の選定を行い、個人や民間発注の場合、ハウスメーカーや工務店などに施工を依頼します。
⑥施工監理
施工会社の選定を終え、業者を調達した後は、計画・図面通りに施工が進められているか、不備や不具合が内貨を確認しながら完成まで工事監理を行います。
工事監理では、主に現場施工管理の5大項目(QCDSE)を実施します。
具体的には、「品質管理(Quality)」「原価管理(Cost)」「工程管理(Delivery)」「安全管理(Safety)」「環境管理(Environment)」の5つに分類される管理業務を行います。
⑦引渡し
工事完成後、建築物を発注者に引き渡します。
完成後は、建築物に問題が生じていないか定期的なアフターフォローも重要になります。
上述の通り、建築設計の仕事は、意匠設計をはじめ、構造設計、設備設計等の様々な職種の担当者がかかわりあって一つの建築物を造り上げます。
その過程で干渉問題や業務調整で問題が生じることも少なくなく、協力しあうことが重要になります。
お互いが密接に関わり合い、力を合わせて一つの建築物を仕上げるという仕事なのです。
意匠設計の職場
ここでは、匠設計業務を行う場合の主な職場であるハウスメーカーや組織系設計事務所について補足します。
意匠設計業務を行う場合は、ハウスメーカーや組織系設計事務所の他にも、建設会社やアトリエ事務所などが候補としてあります。
ハウスメーカーは、ハウスやホームなどのようにテレビCMで良く見る業界であり、戸建て住宅からアパートまで小規模の住宅を主に扱っています。
間取りやデザインなどの独創性は重要視せずに設計にかける時間を少なくして営業と建設で利益を生み出すモデルです。
組織系設計事務所とは、100~1000人規模の設計事務所集団であり、大型の公共施設である、東京タワーや東京スカイツリー、国立競技場など時代を代表する大規模建築物を取りまとめて設計します。
組織系設計事務所は、多くの専門知識と経験を有しており、人員も多数そろえているためマンパワーも強く、多くの国家規模の大型案件に関わることができます。
建設会社は、いわゆるゼネコンにおける設計業務従事者であり、組織系設計事務所の側面も持っています。
アトリエ事務所は、建築家と呼ばれる少数精鋭のデザイン性重視の設計事務所です。
建築家の学生が夢見る職業の一つであり、独自性、独創性を強く反映できる非常に専門的で狭き門の世界です。
まとめ
建築設計事務所の仕事内容や職種ごとの違いを理解できたでしょうか?
建築事務所といってもその職種や職場は多数あり、それぞれの専門性を生かした就職先は異なるものとなります。
建築家と一言にいってもどの職種でどの組織に所属しているかで専門性も異なるため、これから建築設計事務所へ挑戦したいと考えている人は違いを理解し、明確な目標をもって挑戦することができれば幸いです。
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