建設業界の週休2日の現状は?働きやすい環境実現のために - 新建設コンサルタント株式会社
Construction column

建設コラム

建設業界の週休2日の現状は?
働きやすい環境実現のために

 

働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。

そのような状況において、建設業では週休2日は確保されているのでしょうか?

本記事では、建設業の実態を説明し、働きやすい環境の実現のための取り組み事例も併せて解説します。

  

働き方改革

  

  

建設業の働き方の実態 

従来、建設業界では、土曜日は稼働日として考えられており、休日は日曜日のみとなっていました。

労働基準法上は、土曜日を休日として扱っているため、土曜日勤務は時間外労働とカウントされています。

この様な背景より、建設業では休日数が他産業と比較して少ないことが問題視されていました。

 

具体的に、「2016年産業別年間出勤日数(厚生労働省の統計結果)」では、建設業を全産業と年間の勤務日数で比較した時、全産業では222日のところ、建設業では251日と30日程度多く出勤していることが分かりました。

一方で、残業時間は、「2019年度産業別月平均残業時間(厚生労働省の統計結果)」では60時間と、全産業平均の25時間とは大きく差が出る結果となりました。

更に2016年の産業別休日形態のアンケートでは、建設業の休日形態は、40%程度が日曜のみの休み、つまり週休1日制であることが示されました。 

 

国土交通省の「建設現場の休日拡大に向けて」のデータでは、2013~2014年度に竣工した国土交通省の直轄工事では、4週8休となる週休2日制の導入率は全体の1割に満たない状況でした。

近年では、建設業界でも官民一体となって推進する「建設業働き方改革加速化プログラム」が策定され、週休2日制の導入率に上昇の変化がみられています。

 

建設業働き方改革加速化プログラム

  

一体なぜ、建設業界には週休2日制が浸透していかないのでしょうか?

ここからは、週休2日制が導入されていない理由について建設業特有の背景を踏まえて解説します。

  

  

建設業界で週休2日制が進まない背景 

建設業界で週休2日制が進まない理由は、下記の6点が考えられます。

それぞれの理由についても詳しく説明します。 

 

  1. 現場は天候の影響で左右されるから 
  2. 慢性的な人手不足から作業員を確保することが困難だから 
  3. 協力会社(下請企業)の多くは日給制(出稼ぎ)だから 
  4. 機材のリース料金が高くなる、利益率が低下する 
  5. 工期へのしわ寄せ、受注しにくくなる 
  6. 文化的な問題 

 

① 現場は天候の影響で左右されるから 

最も大きな理由の一つに、建設業特有の「屋外勤務」による影響があります。

建設業では、一般的に現場勤務となるため屋外勤務が基本です。

そのため、建築工事では台風や強風などの影響を受け、施工ができないケースがあり、土木工事では、雨が降るだけで土工事・コンクリート工事ができなくなります。

その他にも寒冷地ではコンクリート打設から養生期間に通常よりも長く時間がかかるなど、天候によって現場施工状況が大きく左右されるため予定通りに工事が進まなく、休日を予備日として確保するケースがあります。 

 

台風や強風

 

 

② 慢性的な人手不足から作業員を確保することが困難だから 

建設業界は、慢性的な人手不足であり、どの現場でも人の取り合いになっているのが現状です。

週休2日に対応するためには、建設業への入職者の増加や、事務作業の簡略化など業界全体で対応する課題が山積みであり、AIやIT機器などを活用して業務の機械化、省人化、省力化を推進することが求められています。 

 

③ 協力会社(下請企業)の多くは日給制(出稼ぎ)だから

現場では、現場監督の他に協力会社(下請企業)の職員が作業を行います。

基本的に、現場で手を動かす人は協力会社(下請企業)であり、その多くは日給制(出稼ぎ)で働いています。

そのため、週休2日では単純に給料が減ってしまう問題が生じるのです。 

 

更に、協力会社(下請企業)の人の多くは、地元を離れて仕事をするために現場近くに赴任して生活を始めます。

そのため、休日を出稼ぎ先でゆっくり過ごしたいという希望は無く、可能な限り現場で勤務したいという人がほとんどです。

作業員の意向的にも週休2日が望まれていないのです。

もし週休2日を導入しても近隣の現場へ出稼ぎにいってしまい、稼げない現場として、人気が無くなり、人材を確保しにくくなります。

 

④ 機材のリース料金が高くなる、利益率が低下する  

次は、資機材のリースについてです。

公共工事の受注者は、請け負った工事を行うために自社の資機材を活用する以外にリースする手段があります。

そのため、クレーンやバックホウなどの大型機材を借りると月額、日割りで請求が挙がってくるため、可能な限り多く動かすことで利益率が高くなります。

20日の稼働予定で機材を借りる場合、週休2日とすると、1か月の費用が掛かります。

一方で、休みなく動かした場合、2/3程度の費用で済みます。

このように週休2日は、請け負う業者の利益率にも大きく影響します。 

 

⑤ 工期へのしわ寄せ、受注しにくくなる

週休2日制は工期へ直接的に影響します。

公共事業の受注企業は、競争入札により自社であればこのスケジュールで提示した請負金額で、本工事に対応可能と応札します。

週休2日予定で競争すると、週休1日予定の企業と比較した時に圧倒的に負けてしまうのです。

そのため、元々の工期設定は、余裕があるものではなく、努力によって短縮していくものであり、週休2日は当初の想定外である現場が多いのです。 

 

競争入札

 

 

⑥ 文化的な問題

建設業界は、全産業で比較しても高齢者の割合が高いため古い価値観の人間が多い傾向にあります。

そのため、文化的な問題からも週休2日の導入が進まないという背景があります。

ワークライフバランスやQOLの質向上など、業界全体で取り組みを推進していますが、高齢者の中には、プライベートな時間よりも仕事を優先すべきという考えの人も少なくありません。 

 

 

週休2日になった場合の懸念点 

週休2日制が進むことで起こり得る問題点もあります。ここでは2点の懸念事項についても説明します。 

 

工期遅延に伴う経費増大 

上述の週休2日が進まない背景でも述べた通り、元々週休2日ができる工期となっていなかったところへ週休2日を導入するため工期遅延や資機材のリース費用などの経費増大の問題もあります。

公共事業の予算は税金のため、毎年国会で予算が決められています。

その予算を週休2日導入のために増やしていくことへの納得を得ることの難しさが懸念されます。

 

忙しさの増大 

現場施工管理において、ただでさえ日々の業務に忙殺されて残業時間が問題視されている状況下で週休2日の導入や推進を行うことで業務量の削減・人員の増加が見込まれなければ、労働時間が単純に一日減ってしまうことと同義です。

このように他の課題を念頭に置きつつ週休2日制の導入を実施していけるかどうかが懸念されるのです。

 

忙しさの増大

 

 

週休2日の実現に向けて 

週休2日の実現に向けて、どのような取り組みが有効なのでしょうか。

上記問題を解決する策も含めて解説します。 

 

各社の働き方改革の推進 

まずは建設業の各社が前向きに働き方改革を推進することが重要です。

建設業は、産業全体と比較しても労働生産性が高いとは言えないため、長期的に建設業の発展のために働き方を改善することは非常に重要です。

働き方改革は、産業のイメージ払拭にも影響し、新規入職者の増加や賃金増加などの好影響も期待できます。

3K(危険、きつい、汚い)な職場からイメージを脱却させることが重要です。

昨今では新3K(給与・休暇・希望)を実現するため、国土交通省をはじめ多くの発注機関が業務改善を心がけています。 

 

DX(ITやAIの活用)の促進により業務の効率化 

DX(デジタルトランスフォーメーション)の促進としてIT機器やAIなどの、これまで人の手で行っていた業務を機械化する方法があります。

IT機器を活用することで事務作業や書類業務を効率的に処理できることに加えて、状態監視機器などを活用することで人の手では見落としがちだった箇所を確認でき、大きな問題が発生する前に未然の対応が可能になります。

導入初期の投資費用の増加に懸念はありますが、長期に渡った観点で評価し、効果の最大化を図ることが有効です。

更に、AIを活用した分析による効率的な維持管理などを行うことで業務の最適化が実現できます。

 

ITやAIの活用

 

 

技術継承のためにノウハウの蓄積と水平展開 

建設業界は、古くから経験工学と言われており熟練技術者のもとで長い年月をかけてスキルや経験、ノウハウを見て覚えて身につけていく傾向にあります。

人に教える、教わるといったものではなかったものを、座学やノウハウの蓄積と共有を推進することで技術継承とノウハウの蓄積、水平展開を行い、業界全体で業務の効率化と促進が重要です。 

 

受注者から理解 

国土交通省や高速道路事業者(ネクスコ)などの発注機関の理解も非常に重要です。

発注者が業務指示書の時点で当該工事の週休2日の徹底を順守させることで低価格競争も働かなくなり、公正な評価が可能になります。 

 

 

 

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